株主総会の体験

2024/6/27
株主総会の体験

世の中には株主総会という不思議な催し物がある
ずいぶん昔 東証プライムがまだ東証一部と呼ばれていたころに某有名企業の総会に行ったことがある
都内のなんだか高そうなホテルの大広間が会場であった
私はずいぶんラフな服装で行ったが ほとんどの人はスーツであった
私以外にもフォーマルでない服装の人はいたが おそらくどこかの社長さんとかだろう
入場する前に会社のロゴが入っている大きな缶を渡された
中にはロゴ入りのクッキーが入っていた
私はあまり興味がなかったから実家にいる母に渡したことを覚えている
母は甘いものが好きなので おそらく全部ひとりで平らげただろう
あの缶はまだどこかに残っているのだろうか
さすがに缶までは食べれないから残っているかもしれない
総会では会社の事業内容 売り上げ利益の推移の説明 それから役員の選任案の議決 そういったことが行われた
案の議決が行われる際に議長が「ご賛成の方は拍手をお願いいたします」なんて言って
皆がパチパチと拍手をする様が奇天烈な儀式に見えて面白かった
転勤などもあり都内に行くのが億劫になったり 株への興味も失ったから総会にはそれ以来行っていない

最近 興味の沸く事業内容の会社を見つけて株を買ってみた
会社の規模はそこまで大きくない
上場の区分はグロースである
人によっては大したことない企業と思われるかもしれない
しかし 私はこの企業に不思議と惹かれるものがあった
株を買うともちろん「株主総会招集ご通知」が送られてくる
去年は都内の某所で総会が開かれたらしい
なので総会の日は休みをとってそこに行こうと考えていた
「ご通知」の封を切って中身を検めてみると
今年は会場がなくリモートでの開催であった
都内まで行く手間が省けて良い
同時にリモート株主総会は初めてなのでどんなものかと思った

当日 専用のページからログインする際に手間取ったが何とか入場できた
総会は午前10時からであった
凡そ1時間20分くらいの開催であった
良く見慣れているその会社の社長さんがいろいろと説明をした
開口一番の声が枯れている
画面から見て社長の左側に置かれているペットボトル
もうほとんど最初から水が残っていない
おそらく直前まで何度もリハーサルをしたのだろう
私よりは年上であるがそれでも若い社長さんである
話の途中で噛むことが多々見られたが一生懸命さが伝わってくる
良い社長である
社長の話し方を見ていて周りの部下の優秀さが伝わってくる
話しているセリフのほとんどがおそらく部下の用意したものであろう
社長の顔は正面を向いているが 目の動きから台本を読んでいるのがわかる
事前に送られてきた質問には台本が用意できるが
当日送られてきた質問に対しても台本が用意されるのには驚いた
諸葛亮龐統士元のような優秀な文官がいるのは一目瞭然であった
ではすべて台本が用意されているのかというとそうでもない
社長しかわからないような質問もある
「昨年急激に痩せたことから病気ではないかと噂も聞いたが 現在の健康面での懸念はありますでしょうか」
こんな質問は本人にしかわからない
「えーと」「あのー」と動揺しているのが伝わってきて台本がないのがすぐにわかる
目の動きも台本を読んでいるときのそれではない
どうやら健康に気を付けてダイエットをしただけのようであった
「事務局と相談する」と言って「しばらくお待ちください」の画面になることもあった
画面が切り替わって元に戻ると社長の横にあるペットボトルの水が満タンまで回復していた
事前に水を用意していた部下がいたのだろう
さすがである

このリモートの総会はすごい
拍手のような摩訶不思議な儀式がないから味気ないのだが
完全に正確に票が集計される点は拍手より確実であろう
最近できた新しい企業だからこそ こういったことに挑戦していくのであろう
古い体質の企業ではおそらくやらないと思う
面白いものを勉強させてもらった

この総会をみていて思ったことがある
事業内容や利益は重要であるが やはり人が一番重要である
この人なら投資しても良いと思えるような人に投資すべきだと思う
いくら事業内容が立派に見えたり 利益の出ている事業でも人格のゆがんだ人たちでは駄目である
それに気持ちの良い人に投資したなら株価が下がっても良い投資をしたと割り切れるものである
私はいままでそういったことを考えなかったが この総会を見ていてそう思った