熊野三山_1日目

2024/6/14
熊野三山_1日目

6月14日
有給で休みである
この日は奈良の橿原神宮か京都の石清水八幡宮へ遊びに行って
残りの土日は来週に迫った神社検定の勉強をしようと考えていた
しかしながら 職場の老人達に休みであることが知れると「日本一長い路線バスに乗れ!」とうるさい
もう耳にタコがだかイカができる勢いである
仕事をしていても寄ってきてそのことを話してくるし 近くを通過しても話してくる
そんなわけであるから とりあえず「考えておく」と言っておいた
この「考えておく」とはお断りの言葉である
日本語とは難しいものでこんな遠回りな言い方がいろいろとある
たとえば飲み屋で「連絡先を教えてくれ」と言われたら
「あなたの連絡先を教えてくれ あとで連絡する」というのもお祈りのワードである
行く気はなかったのだ
だが いつも同じような選択肢を取っていては同じ人生の繰り返しになってしまう
私は1日を365回繰り返す人生よりも充実した1年を生きる人生でありたいのだ
かくして私は「日本一長い路線バス」の旅にでることにした

バスの始発は奈良県大和八木駅から出ているらしい
奈良交通が運営しているバスである
1日に3本でている
1本目に乗るのは無理そうだったので 2本目の便に乗ることにした
たしか11時30分くらいに出発だったと思う
片道約6時間半の旅である
バスの終点は新宮という場所らしい
読み方は「しんぐう」和歌山県の南のほうである
事前に予約が必要と噂を聞いていたので駅近くの奈良交通観光窓口へ行った
窓口の方曰く「路線バスなので事前予約は必要ない」とのこと
降りるときに支払いを早く済ませたかったので窓口で事前にチケットを買っておいた
¥6,150だったと思う
始発から終点まで同じ便に乗った場合 記念品がもらえると教えてもらった

新宮駅行きチケット


長い旅になるので途中で何回か休憩のポイントがあるのだが食事は事前に買っておいたほうが良い
買う場所が山の中まで入ってしまうとないからである
私も乗る前にコンビニでおにぎりを買っておいた
飲み物もあったほうが良いが 路線バスにはトイレがないので飲みすぎには注意である
バスが来るまで1時間くらいあったので駅の周りを徘徊することにした
大和八木駅橿原市にあるのだがどうやら市とCAPCOMがシティーセールスというものをしているようだ
ストリートファイターのキャラクターの銅像をいくつか見つけることができたなぜ橿原市CAPCOMがそういったことを始めたのかは謎である

キャラクターの銅像

 

出発の時間が近くなったのでバス停へ向かった
すでに何人か並んでいた
しかし この日は平日だったので座席に座れないことはなさそうである よかった
バスがやってきた
本当に路線バスである!
長距離だから座席とかが特別仕様・・・なんてことはなかった!
優先席もあるし 黄色い手すりもある つり革もある!ちゃんとした路線バス!

新宮駅までの路線バス


私は運転席後ろのお一人様用の席に座った
なんだかワクワクしてきた
乗車後に運転手さんから終点まで行く乗客の確認があった
私と老夫婦 新婚さんの計5人が最後まで乗車するようだ
お一人様が私だけだったので少し気まずく感じた
事前の確認は記念品の準備が関係しているようだった
私は片道6時間半ずっと起きているつもりでいたのだが
発車後 前日の仕事の疲れからか気が付いたら寝てしまっていた
目が覚めたのは最初の休憩ポイントの五條バスセンターである

ちょうどそのあたりから山の中を走り始めたように思う
山道は揺れるので乗り物酔いする人は地獄かもしれない
乗り物酔いする人は運動神経が良い人が多いらしい
運動神経の良い人は三半規管が敏感でそれが災いして乗り物酔いするそうだ
私は幸運なことにそこまで運動が得意でないので酔わなかった!

青々とした木々の中をバスが走っていく


自然は良い
ただただボーッと向かい側の渓谷の風景を眺めていた

周りが緑になってくる

ただの路線バスが山道を走っていると中はだいぶ騒音がする
ところどころでバスの観光案内があったが聞き取れないことが多かった

しばらく走っていると川が見えてきた
おそらく十津川(熊野川)である
透き通った水が美しい

2番目の休憩ポイントに到着した
場所は十津川村 上野地停留所
十津川村は日本一大きい村らしい
琵琶湖より少し大きいくらい
歴史的にもとても重要な村らしく 税が朝廷から免除されていた期間があるとかバスのアナウンスであったが
詳しいことはよく聞き取れなかった
ここには日本一長いつり橋があるそうだ
休憩時間は2~30分程度あったので行くことにした
この路線バスを勧めてきた老人会も「長いつり橋があるぞ」と言っていた
つまりは意訳すると「渡れ」ということである
つり橋の名前は「谷瀬橋」昭和29年3月に完成した橋らしい
昭和29年といえば自衛隊が発足したり 1円未満の通貨が廃止されたくらいの年である
すごく昔である
つり橋の長さは297m 高さ54mあるらしい 看板に書いてあった
とりあえず渡ることにした
私は高所恐怖症なのであまり下は見たいように心がけた
丁度真ん中くらいまで歩いたときに気づいたのだが
この橋 薄い木の板一枚が割れたらその下にネットも鋼線も張っていない
つまり真っ逆さまに落ちるのである
ふー
深呼吸
とりあえず板が割れても近くにしがみ付けるように覚悟をしながら渡り切った
さて 次は戻りである
同じ要領で橋を渡り始めてちょうど真ん中くらいまで来たあたりで風が吹き始めた
ビュービュー音が鳴っている 橋も揺れる 最悪である
しかも目の前に結構な人がいた
この橋20人以上乗ってはいけないはずなのだが20人くらい乗っている
「谷瀬吊橋渡橋注意」の看板
(1)この橋は一度に20人以上渡ると危険です
もう生きた心地がしない
早く渡り終えたい
なんとか無事渡り終えた 橋の横をみると小さなお地蔵様が鎮座していた
無事に感謝して小さな木箱に100円を置いてきた

日本一長いつり橋

バスが発車してしばらくすると「~湯」という停留所が多く出てきた
温泉が多い地域に入ってきた
川も十津川から熊野川に名前が変化した
バスのアナウンスでは「このあたりから川の名称が熊野川へと変わります」と言っていたが
私は思うに川の名称の変化は場所的なものではないと思った
川を見ると無色透明だった川の色がシアン色に変化していくのだ
最初この色は藻かなにか植物やプランクトンに由来するものかと思ったが 温泉由来の鉱物によるものだと思う
植物由来なら水に濁りがあるがそれがなかった
昔の人は場所というよりこの色の変化をもって十津川から熊野川への変化と考えたのではないだろうか

この明るい青緑色の川を見ているといろいろと思うことがあった
民俗学のような話になるが
昔 川と龍を同一視する考えがあったそうだ
川の形は長細く 荒れ狂う川が多くのものを飲み込む様がまさに龍のようである点などからである
この青い川はまさに青龍のようである

また普通でない水の色から紀伊半島に風土病があることを思い出した
牟婁病(むろびょう)」とか「紀伊ALS/PDC」と呼ばれている
体が動かなくなったり 認知症のような症状がでるらしい
古くは江戸時代から知られている病である
原因はまだわかっていないが水が疑われたことがあったらしい
この川の水をみているとそんなことを思った

最後の休憩ポイント「十津川温泉」に着いた
おそらくここに足湯を楽しむ場所があったようなのだが
休憩時間が10分ほどしかなかったため外を歩くのはやめておいた
このポイントで運転手さんから記念品を貰った
吉野杉で作られたしおりである
しおりには乗車日とともに
「あなたは(途中略)同一便で完全に乗車されたことを証明します」と印字されていた
なかなか良い記念になるものを手に入れた

記念品_令和6年6月14日

本宮大社前」にバスが止まった
大きな黒い鳥居が見える
「ここが熊野本宮大社か」と思った
降りようか迷ったが降りてしまうとせっかくもらった「完全乗車証明」が嘘になるので我慢した

終点の新宮まで約1時間である
google mapを見る限り新宮は町なのだが 未だ山と森が続いているので本当に新宮が町なのか不安になった

泊まる場所の予約を取ることにした
前日まで泊まるつもりでいたホテルは満室で予約が取れなくなっていた
「真冬でもないし野宿でもいいかな」と思ったが 次の日が雨だということを思い出した
さすがに泊まる場所を探さないとまずい
到着場所から徒歩で15分くらいの場所に良さそうなホテルを見つけた
予約が取れてよかった

そうこうしているうちに終点に着いた
だいたい19時くらいだったと思う
疲れた 腰が痛い お腹もすいた

終点の新宮駅_時刻18時25分

とりあえずホテルに直行した
あまり接客慣れしてなさそうな人がフロントの対応だったが
スタッフさんの慣れないなりに頑張っている感じが伝わってくる
良いホテルである!
2泊で予約したが連続で同じ部屋は取れなかったらしく明日はまた別の部屋へ引っ越しである
1日目の部屋は5階であった
なかなか広い部屋に感じた
ちょっと前に名古屋の激安ホテルに泊まった時は2畳くらいしかない部屋だったから城のように広く感じた
WIFIの電波も良好!
机にホテルのアンケートが置いてあった
どんな内容か確認するとすでに回答が書かれている
お掃除のスタッフさんが回収し忘れたのだろう
慌てん坊さんである
日付を確認すると どうやら私の前にここに泊まった客の返答らしい
選択式の答えのほぼすべてが満点だった
これは良い
私の目に狂いはなかった
ここは良いホテルである!

荷物を置いたら飯である
もう日が沈んで遠くまで町を散策する元気もなかったので近場に良さそうな店がないか探した
海が近かったので魚を食べたいと思った
何件か見たがちょっとお値段が高いように感じた
黒潮寿司」なるチェーン店で食べることにした
寿司を注文してから出てくるのが速い!
エンガワとカツオが特に美味しかった
エンガワに生姜がついているのは初めてだったがなかなか良かった

食べ終わった写真 残念なことにネタの写真をほぼ撮っていなかった

ホテルに帰って明日の計画を練ることにした
せっかく熊野本宮大社近くまで来たのだ
熊野三山(本宮 速玉 那智)は絶対に帰る前に行こうと決めた
細かいバスや電車のルートを考えてから寝た
疲れていたらしく21時半くらいにはもう寝たと思う
明日は熊野本宮大社からである


6月14日終わり