貴船神社
老人会のF氏はやたらと天王寺を勧めてくる
だが わたしは特に天王寺に行く用事はないのだ
今週末も京都である
晴れなら貴船神社 雨なら石清水八幡宮にいくつもりでいる
タクシー運転手に聞いたら雨の日の貴船神社はしんどそうな話をしていた
石清水八幡宮は雨でもケーブルカーで移動できる
そして今週末は雨の予報である
なので石清水八幡宮に行こうと思っていた 天王寺はアウトオブ眼中である
そういう話をF氏に告げたところ
「ホタルがいいよ!ホタル!ホタル見に行け!」と言い出した
わたしは東京育ちなので蛍なんて自然界には存在しないもののように感じていた
蛍以外にも自然界に存在しないと思っていたものは多々ある
「虹」「雪の結晶」「流星」ああいったものは実際に目にするまでは信じられなかった
サンタクロースのようなよくできた作り話のように思っていた
なので最初私は「蛍」でなく「小樽」か何かの聞き間違えかと思った
しかし蛍がみれるとはすごい
調べてみると下賀茂神社や哲学の道近くで蛍がみれるそうだ
ただ6月中旬から下旬が見ごろでピークは過ぎていた
だが 言われたからには見に行かないわけにいかない
週末は京都に一泊することに決めた
2024/7/6
天気は晴れである
雨の予想であったのに前日には曇り予報 そして当日は晴れになった
予定では石清水八幡宮へ行くつもりであったが貴船神社へ行くことにした
京都駅で1日乗車券を購入後 国際会館駅まで移動
そこからバスを利用すれば貴船口まで移動できる
ただバスの一部区間が1日乗車券の対象外なので追加で200円払う必要があった
貴船口に到着後そこからさらに別のバスに乗れば貴船神社近くまで移動できる
しかし せっかく晴れているので自分の足で歩くことにした
せいぜい徒歩30分くらいである
なんだか猿でもでそうな雰囲気である
しばらく歩くと「熊出没注意」の看板があった
猿どころではない熊がでる
ただこの時わたしは妙に無敵感があり
「なにが熊だ ならこっちは象だぞう」という気分であった
川沿いの道を進んでいくと「蛍岩」なんて大きな岩があった
どうやら蛍の名所らしい
調べてみると7月上旬はまだ見ごろらしい
これは良い
下賀茂神社や哲学の道でなくこちらに蛍を見にこようと思った
しかしここは道が狭い
ぎりぎり車がすれ違えるくらいの道幅である
さらに進むとなにやら面白い構造物が目に入った
川の上に板が張ってあって そのうえにお座敷がある
川床というものらしい
このお座敷で食事をしてみたくなってお値段を確認すると1食1万5千円くらいだった
わたしが今夜泊まるホテルのちょうど倍くらいである
さすがにもっと手ごろなお値段の店があるだろうと思いその店は後にした
貴船神社に到着した
外国人客がそこそこいたが別段混んでいるような様子ではなかった
境内に入るとき入り口に「七月七日水まつり」と書かれていた
京都検定のテキストを確認するとかなり有名な神事らしい
これはもう明日も来ないわけにはいかないと思った
境内には七夕が明日なので短冊が飾られていた
白と黒の馬の石像があった
貴船神社は絵馬の発祥の地と言われている
もともとは実際の馬を奉納していたのである
石像のところにもそんなことが書かれていた
本殿に参拝していつもならここで御朱印をもらうのであるが
ここからさらに徒歩20分くらい歩いたところに奥宮という場所がある
もともとはそちらが本殿である
そこも参拝してから御朱印を貰うことにした
道中 小さな小石を積み上げたオブジェを目にした
入り口を入ると不思議な空気を感じた
空気がひんやりしている 参拝が終わると急に風が吹いた
落ち葉が日光に照らされて幻想的な感じがした
黄昏ていると腕に入れ墨の入った少しやばそうな兄さんに話しかけられた
「こういったところは好きですか」と聞かれた
「たぶん好きだから来ているのだと思います」と答えた
そこからしばらくその人と神社仏閣についての話をしていた
最近よく人から話しかけられる気がするのだが一体どういうことなのだろうか?
この奥宮の見どころは「船形石」である
これも磐座の一種である
この磐座の下に貴船の由来になった「木船」あるいは「黄船」があるらしい
本当に船があるかは定かではないがロマンはある
奥宮の近くに2千5百円くらいで川床の食事ができるお店を見つけた
ここで昼食をとることにした
鮎から揚げそうめん1950円+席料500円である
この席は椅子である
+1000円で一番良い席にできたがそちらは座敷であった
座敷より椅子のほうが楽ができると思った
席のほうへ行ってみると なるほどなぜ+1000円なのか分かった
見晴らしが+500円の席より良い気がした
そうめんには鮎のほかに何やら知らない山菜が入っていた
あれはなんという山菜なのだろうか
本殿まで戻り御朱印を貰い時計を見ると15時くらいだった
石清水八幡宮は18時に閉まるので急いでいけば間に合う時間である
わたしは欲張ってそちらにも行くことにした
何回かの乗り継ぎをしてケーブルカーも利用して17時前に着いた
しかし妙に静かである
それもそのはず社務所が閉まっている
これはどうしたことかと思った
張り紙がしてあり
「開設時間・・・閉設一六時」と書かれていた
なんてことだ神社に入場は18時までできるが
社務所は16時に閉まってしまうということだ
せっかく来たのにこれでは御朱印がもらえない
「また改めてくる」と拝殿で手をあわせて帰ることにした
帰りも同じ道ではつまらないかなと思い別の道からケーブルカーまで帰ることにした
するとおかしい
看板の示す道を通っているはずなのに
「私有地 立ち入り禁止」の看板のある場所に出てしまう
何往復かした後 同じ道を通過する人を見つけた
あとについていくとどうやら私有地っぽいところを突っ切るようだ
その先にすぐに駅があった
「そんなのわかるか!」と思った
踏んだり蹴ったりである
近くに飛行神社とい場所があったので飛行に走ってやろうかと思った
「今日はお前さんはお呼びじゃないよ」と神様に言われているような気がした
帰りのケーブルカーの中で徒然草のお話が放送されていた
仁和寺のある法師が石清水八幡宮の本殿を別の場所と勘違いしたお話である
結局 その法師は本殿へ行かずに帰ってしまったという
それに比べればわたしは電車に乗って手軽にこれるのだからマシである
なんだか神様に慰められている気がして変な気分になった
戻って京都駅で食事を済ませた
今日の夕食は冷やし担々麺である
担々麺は一般的に辛いのだが 辛い物を冷やすとこれがうまく調和されて美味しいのである
昔 東京の四ツ谷駅の近くにあった「広島つけ麺 ぶちうま」もその類であった
食事のあとはホテルへ向かった
今回宿泊するのは二条城近くのホテルLiVE MAX
わたしはこのホテルをずっと「ライブマックス」だと思っていたのだが
正しくは「リブマックス」なのを初めて知った
ASUSの読み方が「アスース」でなく「エイスース」であった時のような衝撃を受けた
宿泊手続きはフロント横の端末から行った
フロントのスタッフと挨拶以外の会話をすることなくカードキーがもらえた
この辺のシステムはアパホテルに似ていると思った
部屋は4階であった
タバコのにおいがする
予約を禁煙でしたつもりだったが予約確定の通知には喫煙となっていた やらかした
着替え等の荷物はホテルへおいて夜の貴船に向かうことにした
昼は国際会館駅からバスで貴船口まで移動したがバスは夕方までである
なので国際会館駅から叡山電鉄の八幡前駅まで歩いてそこから貴船口を目指した
夜の21時近くの電車である ほとんど人は乗っていない
貴船口についたが真っ暗である
電灯はあるがその周辺が見える程度である
暗い道をしばらく歩くと一台の車が停車していた
その近くで女性二人が闇の中に何かを探していた
「何かお探しですか?」と声をかけた
蛍が見れると聞いてきたが全然見つけられないという話だった
車が止めてある場所は「蛍岩」のすぐ横と話していた
蛍の名所だからかこの周辺だけあえて電灯がなかった
だからここが「蛍岩」の場所だと話を聞くまで分からなかった
「そうか せっかく夜に頑張ってここまで来たが蛍は結局見つけられなかった」
そんな残念な日記が書けるなんて話をしていると何やらが光っている
蛍である
「おお こんな光り方をするのか」と思った
我々は川のほうを必死に探していたのだが
蛍はそれよりも少し高い場所 木の上とかを見上げるといるのが分かった
記念に写真を撮ろうと思ったのだが 如何せん光が弱い
辛うじて白い豆粒みたいな写真が撮れた
これじゃ何の写真か説明してもらわないとわからない
蛍の数はそんなに多くはなかった
視界に多くて3匹移る程度だった
しかしながら神秘的な不思議な光であった
しばらく余韻に浸った後 帰路についた
2024/7/7
今日も貴船神社である
年に一度の重要な祭り「水まつり」がある
朝は適当に二条城近くのなか卯でうどんを食べた
うどんにはとり天が付いていた
「とり天」「から揚げ」「チキンナゲット」「竜田揚げ」の違いは何か
そんなことを考えながら食事をしていた
貴船神社の「水まつり」は10時からである
だいたい時刻くらいに神社に到着した
本殿前にはテントが張られて特別席なんかが用意されていた
なんだかやんごとなきお方のような人たちが前のほうに座っていた
時刻は過ぎていたがまだ始まっていない様子であった
(後で調べたところ「献茶祭」という神事がこの時行われていたよう)
わたしは二日連続になるが貴船神社の御朱印をまたもらいに行った
二日で貴船に3回も観光でやってくる阿保はそうそういないだろう
御朱印帳に二日連続で貴船神社の御朱印があるとそういったことをすぐに思い出せるような気がしたのだ
社務所で巫女さんと会話をしていると祭りが始まったようだった
宮司さんから神前に捧げる食べ物についての説明があった
昔は鶴なんかを神前に捧げていたころもあったらしい
今日は「神前の鯉?(澤の鯉?)」と「藻隠れの鯛」というものがみれるようだ
何のことかよくわからなかったのだが要は魚をさばく神事である
まずは鯉をさばく神事から始まった
右手に担当 左手に長い箸をもった神職の方が
神前に捧げる鯉に全く手を触れることなくさばいていく
これがただ解体するというだけでなく舞のようなものである
流れるような見事な動きである
そして最後には鯉の腸が傷つけられず見事に一本の紐のようにあらわになった
「庖丁牛を解く」とはまさにこのことかと思った
私のすぐ横にいた老婆は「三枚おろしの儀式」と笑っていた
次は鯛をさばいていく神事である
鯉の時とおおよそ同じ内容であった
私の隣にいた老婆は家族で来ている観光客らしく
そろそろ移動する趣旨の話を連れからされていた
「この三枚おろしが終わったら行く」と返事をしていた
なんだ ばあさんも三枚おろしが気になるのかと思った
そのあとは宮司さんから祝詞があったり 舞楽があったりで祭りは終わった
最初は水まつりを最後まで見るつもりはなかったのだが
なんだかんだほぼすべて見てしまった
よかった
ちょうど七夕だったので帰り際に適当に短冊に書きものをした
短冊は1枚100円だった
今年の七夕はよろしい一日であった